ここ一、二年、売れに売れた新築マンション。その主役は、「月々家賃並みの返済でマイホームが持てる」の呼び声に飛びついた、三十歳前後の一次取得者だった。しかし、ここにも大いなる幻想がある。家賃を払うのと、借りたカネを返すのとでは、たとえ懐から出ていく額が同じであっても、実際にはボーナス返済分や修繕積立金、リフォーム代などを考えれば買った方が高くつくが、意味するところはまるで違う。賃貸なら所有権はないが、借金もない。しかしマンションを買ってローンを組めば、莫大な借金を抱えることになる。この借金は地震や火事などで建物が崩落したり、焼失したりしても、損害保険で相殺されない限り残る。たとえ崩落を免れたとしても資産価値は激減し、まず転売は無理だろう。さらにいえば、一戸建てなら自分の裁量で、好きなように建て替えや解体工事ができる。カネがないなら、とりあえず自分の土地にテントを張って暮らしたって誰も文句は言わない。しかしマンションの場合はそうはいかない。何をするにも居住者の同意が必要で、自分で勝手にどうこうすることは不可能だ。しかも建て替えるとなれば、容積率などの建築規制が絶望的な障害として立ちはだかる。誰もが何となく、漠然と感じてはいたが、「値上がりしたら転売してしまえばいいから」と、あえて目を背け、考えることを放棄してきた分譲マンションの将来的な資産価値への不安、その「正体」が、今回の震災で白日の下に晒され、目の前に突き付けられた。その現実のあまりの厳しさ、残酷さに、庶民はうろたえ、たじろいだ。
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