大型投資による構造変化がもたらす影響を具体的に考えてみたい。ビルの大型投資は平成一一(一九九九)年を底にして平成一五年にピークを迎えた。すなわち、一一年には三六万平方メートルしかなかった東京都二三区内の大型オフィスビル(事務所延床面積一万平方メートル以上)の新築面積は、一五年には約二二万平方メートルになった(第2表森ビル調べ)。三井不動産(汐留シティセンターなど)、森ビル(六本木ヒルズなど)、三菱地所(丸ビルなど)をはじめとする一流企業が積極的に投資を行ない、贅を尽くしたオフィスビルを都内のあちこちでつぎつぎに竣工させた。いまのテナントは新・近・群・大ビルを好んでいる。丸の内、六本木、汐留、品川のこうした新ビル群は、新(新築)、近(駅に近い場所にあり)、群(複合ビルが群れている)、大(フロアーが広く高層のビル)の条件がそろい、テナントの需要もきわめて旺盛だった。この新築ビルにとって、中古ビルに入居しているテナントを説得して移転させることは容易だった。バブル後に完成したビルは、バブル期に建てたビルより土地購入費、建築費、仕入金利のいずれも安いため、中古ビルより賃料も安く設定でき、テナントの人気も高いからだ。同じ賃料でもバブル期に建設したビルは赤字でも、新築ビルは十分利益を確保できる。それでも現実には、テナントは最高級オフィスビルをかなり高めの賃料で契約している。少しくらいいままでより高い賃料でも、通勤に便利で社員は満足し、点在していた本社機能や子会社群が同一ビルに入居できて効率化を図れるほど広く、新しく機能的で快適なビルだからだ。
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